「おっしゃられる」という表現は、尊敬語の「おっしゃる」と助動詞「られる」が組み合わさった二重敬語で、一般的には文法的に推奨されていません。
にもかかわらず、この表現が広く使われ続けているのは、社会的な慣習として定着しているからです。
この記事では、「おっしゃられる」は敬語としてビジネスで使えるのか?、言い換え表現や例文を交えながらご説明します。
「おっしゃられる」は敬語としてビジネスで使える?
この表現がなぜマナー違反とされるのかというと、敬語は使用されることによって徐々にその敬意が減少していく傾向にあります。
これを「敬意逓減(けいいてんげん)の法則」と呼びます。
例えば、かつては敬語だった「お前」や「貴様」が、時間が経つにつれて軽蔑的な意味を持つようになったのもこの法則によるものです。
「おっしゃる」は現在でも広く使われる適切な敬語ですが、歴史が長いために時としてより強い尊敬表現が求められ、「おっしゃられる」が高い敬意を示す表現として使われることもあります。
文化庁が2007年に公表した「敬語の指針」では、「二重敬語は一般に不適切である」と指摘しつつ、「習慣として使われている言葉もある」と述べています。
したがって、「おっしゃられる」が社会に広く根ざしているとはいえ、適切な敬語としては「おっしゃる」に言い換えることが推奨されています。
ビジネスでの「おっしゃられる」の扱い
「おっしゃられる」は典型的な不適切な二重敬語とされ、社会的にも広く使われているにも関わらず、ビジネスシーンでは使用を控えるべきです。
国会の質疑応答や大企業の会議でも耳にすることがありますが、適切な敬語の使用が求められます。
例文
例えば、プロジェクトの更新情報を伝える際に「部長が最新の進捗をお知らせになりました」と表現するのは適切ですが、「部長がおっしゃられた最新の進捗」と表現すると二重敬語となり、好ましくありません。
このように、ビジネスにおいて「おっしゃられる」を使用する際は注意が必要であり、可能な限りシンプルな敬語を使用することが推奨されます。
「おっしゃられる」を避けるべき理由
「おっしゃられる」を避けるべき理由の一つは、ビジネス環境での言葉遣いが非常に重視されるからです。
敬語を誤って使用すると、教養がないと見なされたり、非専門的な印象を与える可能性があります。
このような誤解を引き起こす言葉遣いは、企業間の競争で不利になることがあり、正しい敬語の使用は相手に敬意を示し、信頼関係を構築する上で重要です。
敬語の使い過ぎによる問題
「おっしゃられる」の使用を避けるもう一つの理由は、敬語が過度になると、コミュニケーションが煩雑で理解しにくくなることです。
敬語を使いすぎると、相手に過剰な遠慮をしているように感じさせ、逆に関係に距離を生じさせることがあります。
また、過度に丁寧な言葉遣いは、不自然に受け取られることもあります。
ビジネスでは、伝える内容を明確かつ簡潔にすることが求められます。
例えば、重要な商談で提案を説明する際に、「昨日、おっしゃられたご要望に応じて改善案を考えました」とするのではなく、「昨日いただいたご要望を基に改善案をまとめました」と簡潔に伝えるほうが、相手にとってもクリアで誠実な印象を与えます。
ビジネスにおける「おっしゃる」の正しい使用方法
「おっしゃる」は、目上の人が何かを言う際に使う敬語です。
ビジネスシーンでは、上司や顧客が発言するときに「おっしゃる」という表現を使って、その人に敬意を表します。
この敬語は、自分自身について話すときには使用せず、尊敬する相手の行動や発言に対して用います。
ビジネスでの敬語の使い分け
ビジネスの場面で、顧客や取引先との会話では、自社の行動を話す際には謙譲語を使うことが一般的です。
例えば、自社の社長が何かを発言した場合でも、顧客に対しては「社長がおっしゃったように」と言うのではなく、「先ほど社長が申し上げた通り」と表現するのが適切です。
「おっしゃる」と「おっしゃられる」の使い分け
「おっしゃる」は「言う」という動詞の尊敬語です。
一方で、「おっしゃられる」は「おっしゃる」に更に「られる」が加わり、これが二重敬語とされるため、一般的には避けるべきです。
ただし、相手に対する言動を敬語で表現する際、「言われる」という受動態で使う場合の「おっしゃられる」は適切な敬語として認められます。
「おっしゃられる」の例文
「もっと早く結果を出してください」と言われても、資料が揃わないと何も進められません。→「もっと早く結果を出してください」とおっしゃられても、資料が揃わないと何も進められません。
また、「言うことができる」の尊敬語として、「どうしてそんなことをおっしゃられるのですか?」と尋ねることも一つの表現方法です。
「おっしゃられる」の誤用について
「おっしゃられる」を誤って使う一般的な例は、尊敬語として直接に「言う」の意味で用いる場合です。
例文
二重敬語について
二重敬語は一般的に誤用とされる表現です。
特に「おっしゃられる」や「お召し上がりになる」などがその典型例です。
これらの場合、正しくは「おっしゃる」や「召し上がる」といった形を用いるべきです。
一部の人々が「おっしゃられる」や「お召し上がりになる」を自然に感じることもありますが、2007年に文化庁が発表した敬語の指針では、敬語は過度に使うべきではなく、適切に使うべきとされています。
二重敬語は慣れてしまうと、その簡潔さを欠くと感じられることがありますが、「おっしゃる」や「召し上がる」のような正しい敬語はその簡潔さに美があります。
敬語は多い方が良いとは限らず、適切な使用が求められます。
「おっしゃられる」の言い換え
「おっしゃられる」の言い換えには以下のような言葉があります。
「おっしゃる」の他に、「言われる」「述べられる」「話される」といった表現も「言う」の尊敬語です。
「言われる」と「話される」は、それぞれの動詞の受動形でもありますので、これらを使用する際は受動形と敬語形を適切に区別して使うことが大切です。
「述べられる」は「述べる」の尊敬形であり、主に公式な発表や意見表明の際に用いられます。
日常会話や個人的な感想を表す際には「述べる」の使用は適切ではありません。
例文
例えば、会社の役員が社員に向けて将来の計画について説明する際には、
と表現するのが適切です。
セミナーで講師が敬語の使い方について説明する場合、
と述べると良いでしょう。
まとめ
「おっしゃられる」がビジネスシーンで正しいのか例文を交えて解説しました。
「おっしゃられる」という表現は、尊敬語の「おっしゃる」と助動詞「られる」が組み合わさった二重敬語で一般的にマナー違反とされています。
言い換え言葉としては「おっしゃる」の他に「言われる」「述べられる」「話される」などがあります。
場面に合った適切な敬語を使用することがとても大切です。
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